治療の機会を逸しない為には症状の有無とは関係なく、包括的な観点からお口の健康状態を把握する検査を行う事は有意義な事であります。
歯科ドックとは人間ドックの目的と同様です。
総合的なお口の健康診断に基づいて問題があれば、口腔健康管理の見直し、口腔内の問題の早期発見、早期治療を行う事で治療のタイミングを逸する事なく早期に治療を行う事であります。
長寿社会の現在では健康な口腔機能の維持する為にはご自身のお口のなかの健康状態の確認、適切な処置の後は定期的なメンテナンスを通して新たな問題を予防する事で生涯にわたり口腔内環境を守ることは非常に重要です。
歯科ドックでは、歯周検査、虫歯検査、咬合(噛み合わせ)の精密検査を実施します。
歯周検査では歯周ポケットを計測する歯周病検査、口腔内粘膜の問題、病変の有無の確認を行います。
歯の周りの骨の状態は歯肉に覆われて隠れているので規格化したレントゲン写真と歯周ポケットの直接的な検査を組み合わせる事で詳細な状態を把握します。
また近年は歯科用インプラント治療が普及し、過去のインプラント治療の状態も検査、評価する必要性も多く見られる様になって来ました。
インプラント治療の評価、術前診査のために、最新の歯科用コーンビームCT撮影装置を導入しております。CT撮影による画像は骨の断面を確認する事が出来ますので信頼性の高い検査を行う事が可能です。虫歯検査では個々の歯牙での虫歯の存在、過去の治療部位の状況の確認を行います。
咬合検査では噛み合わせや歯牙の位置、顎の関節や顎周囲の筋肉の状態を確認致します。
包括的な検査から得られた口腔健康診断に基づいて将来的に起こる可能性がる変化を予報しながら総合判断して治療計画の作製を行います。
当院はチーム医療体制を採用し、治療が困難であると判断される場合、歯の神経治療(歯内療法)、矯正治療等の欧米の大学院出身の専門医による診察やセカンドオピニオンを受ける事も可能です。
お口の機能は人間が生きて行く上で最も基本的な行為である食事を摂取する場所であり、一生涯、毎日使い続ける重要な器官です。
お口の機能としては大きく分けると食事を噛み砕いて唾液と混ぜて消化を促す消化器系統の入り口としての働きと、会話するために音を言葉に変えるコミュニケーションツールとしての機能があります。
また、重要な役割として健康な歯と歯肉は健全なスマイルを演出する上で欠かす事の出来ない審美的な条件であります。
欧米では不健全な口元は、様々な意味で悪い印象を与えます。
ハリウッド映画の悪人は決まって口元が悪い演出がなされ、ニュースキャスターなど知的レベルの高い人間たちは基本的な身だしなみとして健康的な口元は必須条件の様に考えられております。
健全なお口の環境を維持する事は社会に向けて知的で健康な生き方を明るく実践している事を公言する事なのです。
食事を摂取する事はどの様な生き物でも命を維持する上で基本的な行動であります。
しかし、素晴らしい事に、人間はその行為を食べ物の味・食感・香りを高度に楽しむ事ができる生き物です。
つまり食事をする時は楽しむ事は人間的な行動なのです。
年齢が高くなると一回一回の食事の質が重要になります。どんなに素晴らしく美味な食事でも、お口の機能に問題があれば楽しむ事ができなくなります。
つまり、食事をする事が“痛い”、“上手に噛むことが出来ない”等の“悪い経験”になってしまいます。
更に食事は毎日、一日に何回も行う事ですのでその度に嫌な思いをするのは生活の質を大きく損なうのです。
お口の健康状態は体全体にも影響があるとも言われております。
お口(口腔)の健康状態が全身の健康状態に影響を与えたり、逆に全身的な健康状態がお口の健康に影響を与える相互的な関係がある事は知られております。
口腔内には体の他の部位と同様に多くの細菌が存在し、共生関係ができております。
通常は全身的な免疫反応、清潔な口腔を維持する事で細菌の悪影響は押さえられておりますが、清掃が悪くなる事で細菌が増加して虫歯や歯周病が起こります。
また、鼻炎薬、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、利尿剤は唾液の量を減少させる場合があります。
唾液は口腔内の食物残渣を洗い流し、細菌が作る酸を中和するので虫歯や歯周病の原因となる細菌の増加を押さえる効果があります。
近年の医学的な調査では口腔内の細菌と歯周病による歯肉の炎症は全身的な疾患にも影響を与える可能性があると言われております。
また、糖尿病、免疫不全症(AIDS/HIV)は細菌による感染に対する抵抗力を弱くする事で口腔内の問題を重症化させる可能性が示唆されています。
お口や体の他の部位にある細菌が血流と共に心臓に到達して心臓内面の粘膜や心臓弁に付着して感染が起こる疾患です。症状として発熱、心雑音が見られます
心臓血管疾患と歯周病は喫煙、年齢、糖尿病等の共通の危険因子を共用する疾患と言われております。
また心臓病、動脈の梗塞、脳卒中などの血管疾患は口腔由来の細菌・炎症との関連性、歯周治療によって全身的な炎症状態は軽減する傾向を示す調査が存在し、疫学的な関連性が活発に調査されています。
口腔由来の細菌・炎症(歯周病)が早産や低体重児との関連を示す調査が存在しており、妊婦は口腔内を清潔に保つ事が推奨されております。
更に母親のお口の中の環境は子供のお口の中の健康にも影響を与えると言われており、虫歯が多い母親の子供にも多くの虫歯が見られる研究報告もあります。
糖尿病は感染に対する抵抗力を損なう疾患で歯肉にも悪影響があります。歯周病の頻度・重症度は糖尿病患者に多く見られる傾向があります。
また、一部の医学的な調査では歯周病患者は血糖値の管理が困難であるとする報告が存在しております。
お口の粘膜に起こる潰瘍や、口のなかの常在菌によって起こる日和見感染は免疫の抵抗力が弱体化する事で起こる現象です。
多くの日本人にとって歯科医院は歯が痛くなったら仕方なく行かなくてはならない所として認識されていると思います。“お口の緊急事態”起こる時に限って歯科医院を受診し、個々の歯の“痛い所だけ”治療を繰り返す場当たり的な治療は一時的な対応としては十分かも知れませんが、“咀嚼器官”として生涯にわたりお口全体を維持するという観点から考えてみると十分な対応であるとは言えません。
歯の問題は“痛い”という状況に陥る前から既に問題が起こっている事を認識しなくてはなりません。
歯の問題である虫歯と歯周病はどちらも口の中の細菌によって引き起こされる感染です。
口腔内の細菌は完全に駆除する事は生物学的に不可能ですので虫歯と歯周病は生涯を通じてつき合って行く必要性があります。
虫歯と歯周病は時間の経過に応じて徐々に進行する慢性的な感染なので、問題として認識する程の症状が現れるには数ヶ月、数年単位の時間が必要です。
つまり、問題として意識した時には既に問題が相当重症化している事が多く、治療のタイミングを失ってしまっている事も多々あります。
いざ治療を行うタイミングを迎えた時に治療を行う機会がなくなり、抜歯してしまわなくてはならない残念な結果を迎える可能性があります。